フランスの NPO が果たしている役割から学んだこと
バリアフリー社会の実現に悩んでいた時期、フランスの都市「グルノーブル」へ 、NPO の活動を視察する機会がありました。グルノーブルはフランス南東部にある、人口十数万人の小さな街です。
そこで一番驚いたことは、NPO が行政の役割を担っていたことです。例えば、NPO団体である身体障害者協会が、役所の障害福祉課の役割を果たしていました。
視察のとき、車椅子を利用している NPO のスタッフが、住宅改修の相談を受けている様子を見ました。スタッフは相談者に対して的確な受け答えをしており、話の内容には説得力がありました。なぜなら、相談に応じているスタッフ自身が、制度・サービスの利用者であり、実際に問題や課題に直面している当事者だからです。
段差があって入れない障害者用トイレ
問題を十分に認識していないために良い物ができない事例として、嘘のようなホントの話があります。
20年ほど前に、ある街で公共トイレの改修ために署名活動が行われました。障害者でもトイレを利用できるようするためです。
行政は要望に基づき、トイレの改修を行いました。この結果、トイレ自体は障害者でも使えるものに改修されました。しかし、困ったことに入り口には段差があり、車椅子の人がトイレに入ることができなかったのです。もし、改修計画を練る段階で、問題の当事者が関わっていれば、このようなことは起こらなかったでしょう。