「福祉サロン」 – 企業と障害者を結びつける秘策

障害者が働くことができる仕組み作りを行う

福祉サロンの目的

このような状況を踏まえ、私たちは、障害者の自立へ向けた取り組みを社会的な課題と捉えました。そして、次の2つを目的に「福祉サロン」を開催しました。

  1. 民間企業で働くことができそうな障害者と企業のマッチングを行う。
  2. 福祉施設の現場に対して、経営的な視点を強化する。

「福祉サロン」では、障害を持つ当事者とその親、障害者教育に携わる教師、福祉施設の現場スタッフ、企業の人事担当者が一堂に会しました。その中で、障害者の雇用について解決の方向性を見出すための話し合いをしました。

個々の問題を持った当事者の課題解決をするのではなく、企業・障害者・福祉施設が抱える問題を元にして、障害者雇用へ向けた仕組み作りを目指したのです。

企業のニーズを知らない障害者と、
障害者を活用したい企業

企業と障害者の雇用のマッチングが難しいのには理由があります。

障害者の親は「人に迷惑をかけないこと」を第一に考えて子供を育てがちです。教育に携わる教師は、障害者の「できること」を増やすことを目標とします。このため、障害者を含めた関係者は、企業に採用されるためのニーズを十分把握できていないことが分かりました。

これに対して、企業には障害について専門的な知識を持つ人がいません。障害は人により千差万別であり、個別に適切な対応することは難しいのです。

『障害者雇用促進法』では、障害者を雇用することが企業に義務付けらています。しかし、障害者を受け入れるリスクを回避するために、障害者を雇用しない代わりに『障害者雇用納付金』の支払いを選択する企業は少なくありません。

ただし、障害者の雇用に関心を持っている企業もあります。企業は、障害があっても有能であれば雇いたいのです。高い能力を必要としないけれど、企業にとって業務上不可欠な仕事も存在します。障害者を人的資源として有効に活用できれば、企業としてメリットはあります。

企業研修を通して障害者理解を深めてもらう

福祉サロンでは、最初に障害者、福祉施設、企業が抱える問題を共有しました。

その上で、企業・教育者・福祉施設の職員が連携できる体制を作り、障害者の企業研修を行いました。研修では、障害者がどのような仕事をできるか現場で考え、問題があれば、福祉サロンのメンバーで対策を考えました。

研修の結果は、福祉サロンへフィードバックされ、試行錯誤を繰り返しながら、障害者が雇用されるための仕組みづくりを行いました。


企業から福祉施設へ経営的な視点が伝えられた

福祉施設で抱えていた課題は、障害者の賃金を上げることです。そのためには、施設で作る商品の売上を上げなければなりません。

問題は多岐に渡りました。商品を障害者が作ることは、健常者よりもコストがかかります。商品の種類・量も限られています。このため、原材料の仕入れも難しいのです。商品の効果的な売り方、販路を拡大するためのノウハウも民間企業ほど持っていませんでした。企業と取引をする場合でも、単価を調べ、交渉をするビジネス感覚を持ち合わせていないこともありました。

このような問題に対して、企業から福祉施設に経営的な視点からアドバイスが行われました。

当法人のコーディネーターとしての役割

福祉サロンにおいて、私たちはコーディネーターの役割を担いました。コーディネーターは、課題を持った当事者に集まってもらい、当事者間の考え方の調整をしながら、課題を分析し、解決の道を模索する役目を負います。

福祉サロンでは、普段は絶対に合うことのない人たちが顔を合わせるようにしました。課題に対してリアリティを持つ福祉の現場の人と、企業の経営陣が顔を合わせることは重要でした。社会が抱える課題を解決するには、課題を抱える異分野の人が交流できる場を提供することが有効です。

ただし、異分野の人のコミュニケーションは、お互いに理解できない部分が多く、主張・意見が曲解される場面があります。このとき、コーディネーターはコミュニケーションの仲介をします。参加者の発言にある背景を説明したり、お互いに理解できない言葉を解説しながら、お互いの意見・主張が伝わりやすいようにしています。

コーディネーターは、議論されている話題を常に分析しなければなりません。課題を先読みし、事前に適切なマッチングを想定しておくことも必要です。課題を解決できそうな人材を見つけ、福祉サロンの場へ来てもらうことも重要な役目です。