市民リーダーづくり – 課題に立ち向かうための戦略

今後の課題

プロデューサーが成長できる環境を提供したい

この事業を行ったことにより、「ディレクター」役を担う人はたくさん現れました。ディレクターとは、まちの課題を認識し、それに対して 企画を立案し、人を集めることができる人のことです。

「プロデューサー」役も現れています。プロデューサーとは、事業を行うことで影響を受ける「全ての人々の思い」を見据えながら、「事業の継続性」を考え、利害関係者を調整できる人です。

例えば、「川が汚れている」とういう課題があるとします。ディレクターは「川が汚れている」ことを認識したら、メンバーを集い、川を綺麗にするための具体的な計画を立てる人です。これに対して、プロデューサーは「川を綺麗にしたら、喜ぶ人は誰だろう?」「川を綺麗にしたことにより、メリット・デメリットが生じる人は誰だろう?」ということを考えながら、多くの人を事業に巻き込み、人々の
利害を
調整
しつつ、更に新しい価値を創造し、「川を綺麗にする」ことを中心とした継続的なシステムを作る
人です。

今後、プロデューサー役を担える人が、更に成長できる環境を提供することが課題だと認識しています。

経験から得られるノウハウは「新しい価値の創造」

市民活動におけるリーダーは、企業のリーダーとは少し違います。企業のリーダーは利益を上げることが最優先で、給料や昇進に縛られてしまいます。

これに対して、市民活動は不採算である課題に取り組むことがほとんどです。それでも、解決しなければならない社会的な課題はたくさんあります。不採算事業を行うためには、新しい価値を創造し、可能性を引き出すことができなければ、
事業を進めることができません。

企業のリーダーが市民活動から学べることは、この点です。企業は「採算性」を最も重視します。しかし、最初から採算が見込める商品を考えだすことは難しいことです。「不採算のものから、新しい価値を見出す」市民活動の経験は、企業人にも有益だと考えます。

第三者として関わる意義

リーダーを経験した人は、自分がやりたい事業について、私たちに相談に来るようになりました。課題に取り組むタイミングについてアドバイスを求められたり、問題が生じたときにフォローしてくれるように頼まれることがあります。

リーダーは、自分が行なっていることに対して、

「ひとりよがりではないか?」

という不安を常に感じています。

「自分が気がついた課題を、他の人も理解できるか確かめたい」

という思いを持っているのです。

また、現場で行動していると、周りが見えなくなることがあります。例えば、リーダーにアドバイスしている私たちも、他人からアドバイスを受け、目から鱗が落ちた経験があります。

渦中にいると、自分の眼で見渡せる範囲が限られてしまいます。私たちが、第三者としてリーダーにアドバイスする最大の意義はこの点にありました。

リーダー役を担う人との関係性

この事業で一番難しかしかったことは、リーダーとして参加してもらう人を探すことでした。

リーダーとしてのポイントを伝えると、ほとんどの人がリーダーとして役割を担うことができます。しかし、人によって事業の結果に明らかな差がでます。リーダーとなる人が現在置かれている状況、育ってきた背景・家庭環境、友人関係を予め知っておくと、事業の成果が出しやすいと感じます。

また、リーダーとなる人との信頼関係をしっかりと築き、その人が燃えるときはどんなときか、「喜び」を原動力とするのかそれとも「悔しさ」をバネにするタイプなのか、様々なことを知る必要があります。リーダーの発見とフォローの仕方、信頼関係をどのように作るかが今後の私達の課題です。